2013年12月08日

続くけど、一区切り。

12月7日(土)はエコビレッジライフ体験塾2013通年コースの最終日でした。

最終回のメインの活動が「味噌の仕込み」と「しめ縄づくり」なので、僕は前日から豆を煮たり稲わらを湿らせたりと大忙し・・・といっても、実際の「味噌の準備」はその前夜の「豆の浸水」から、いやその数日前の「脱穀」や「選別」から、さらに1カ月前の体験塾でもやった「麹づくり」から、いやいやもっと遡って「豆の播種」や「田植え」からすでに始まっていたわけで・・・
などと考え始めればきりがないのだけれど、暮らしって本来、切りようのない連綿と折り重なるように続く営みなのです。今回仕込んだ味噌を食べ始めるのは来年の秋ですし、残った大豆は来年のタネになり、しめ縄は正月を過ぎれば燃やされ灰として来春の畑の肥やしとなり次の生命の糧へと繋がる・・・
そんな「つながり」の感覚を少しでも感じていただけたらいいなー、と願って毎回体験塾をやっているわけですが、今回は特にその集大成として、「味噌」と「しめ縄」を最後のプログラムに選んだのでした。
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仕込み始める前に、「味噌」についてちょっとお勉強。
材料や分量、工程のことはもちろん、その材料(大豆、麹、塩など)がどういう働きでどんな変化をしていくのか、を仕込みの段階でイメージすることがけっこう大事なんじゃないかと僕は思うのです。
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単純に言えば、「味噌づくり」は麹の持つ酵素・プロテアーゼが大豆のタンパク質をアミノ酸に変える働きがメインなのですが、野性の乳酸菌や酵母など様々な微生物の働きによって「大豆」や「米麹」が時間をかけて「味噌」というまったく別なものに変化していく・・・・「味噌づくり」はそんな「生命のダイナミズム」そのものなのです。
十分それを伝えられたか自信はありませんが、とにかくただ「作り方」を伝えるのが僕の役割ではないので、味噌から「生命の神秘やスバラシさ」を少しでも感じてほしいなーと思うわけですね。
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3年物の味噌と1年前に仕込んだもの味の違いを確認していただいたりもしました。


さあ、いよいよ「仕込み」スタート。
時間をかけて柔らかく煮た大豆をまずは潰します。
独りでやったら結構しんどい作業なのですが、こんなふうに大勢で楽しくおしゃべりしながらやると、あっという間です。
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ちなみに今回の材料は、青大豆3500g、米麹4500g、塩1700g、それと種味噌700gを使っています。
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種味噌は、前に作った味噌を少量混ぜ込むものです。入れても入れなくてもいいかと思うのですが、入れた方が発酵は安定するようです。
それに、過去のいろんな方々の持ってた常在菌を少しずつ受け継いでいくのも面白いかなーと思って、久しぶりに使ってみたのでした。


全ての材料を混ぜます。大豆の煮汁を足して柔らかさを調整しながら、ひたすら混ぜます。この段階で均等に混ぜられていることも、美味しい味噌の条件ではないかと思います。
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材料をよーーーーく混ぜたら、いよいよ味噌づくりのハイライト、「ビターン」の時間です。
ソフトボール大に丸めた味噌玉を樽に投げ込む作業なのですが、ここで「新年の抱負」なんかを一言ずつ叫ぶのが体験塾の恒例なのです(あ、味噌玉を投げ込むのには「空気を抜きながら詰めていく」というちゃんとした理由があるのですよ、一応)。

さあいよいよ始まります。

ビターン!(抱負はプライバシーにかかわるので割愛…)
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次の方、どうぞ!
ビターン!!
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ビターン!!
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ビターン!!
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ビターン!!
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新しい年に向けて、願いを込めて味噌を投げ切ったでしょうか・・・。
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表面を塩で覆って、ビニルで蓋をし、重石を乗せて、完成(おまじないでトウガラシも乗せました)。
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このまま部屋に放置し、来年の夏に一度切り返しをして、秋には食べ始められるでしょう。
食べ始めはやっぱり、来年の新米祝いかな。



味噌の仕込みが終わったらちょうどお昼です。
このメンバーで食べる食事も、これが最後・・・(でもまた集まりましょうね!)。
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午後は、塾生さんの持ち寄り講座「ミニ講座」から。

Hさんの「アナスタシアのお話し」。
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Qさんの「自然学校の取り組みのお話し」
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Oさんの「ビワの葉温灸体験」。
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ミニ講座のトリは、Mさんの一芸。
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今年のミニ講座も、ずいぶんいろんなことを教えていただきました。
いろんな気づきを与えてくれる素敵な時間だと僕は思っています。



そして、しめ縄づくり。
9月末に刈ったイネのワラを使って、新年を迎えるための注連縄をつくるのです。
これも、「ただつくる」のではなく、稲と共に歩んできた日本の文化や知恵を感じるひとときでもありました。今の社会が失ってしまったたくさんの価値を思い出させてくれる時間です・・・。
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「縄ない」が楽しくなってくるころに時間が終わってしまうのが残念ですけどね。


最後はやっぱり静かに、今年の春からの活動を振り返りましょう。
いろいろなことがありましたね・・・・。
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「味噌づくり」や「鶏の屠畜」など単発で活動するのでなく、ごちゃごちゃと続く暮らしそのものを時間をかけて学ぶのが体験塾。
「知りたいなー」「やってみたいなー」という動機以外のことで面白さが広がっていくのが体験塾。
なにより、「人間はただの<個>ではなくつながっているんだ」ということを実感できるのが体験塾。

そんな、エコビレッジライフ体験塾2013年の通年コースもそろそろ終わりです。
僕からもちょっとしたプレゼントを・・・
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感謝の気持ちを込めて・・・


今年の活動は終わりですが、僕らの「未来につながる新しい暮らし」や「仲間とのつながり」はこれから本格的に始まるはず。
みなさん、これからも、よろしくお願いします。
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というわけで、体験塾2013はひとまず終了です。
参加してくださったみなさん、応援してくださった皆さん、ありがとうございました!

posted by 野良人イトウ at 22:44| Comment(0) | 体験塾2013 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月15日

僕らの暮らしと「生命」。(後篇)


屠畜・精肉実習後の新田さんを囲んでの談話は、屠畜や家畜の話だけでなく、現代の社会問題へと話題が広がりました。そもそも、新田さんの今に至る経歴も、ご自身が感じてきた社会への問題意識が発端であるそうです。
15年前くらいに稚内でスタートした「ファームレラ」「スペースレラ」の活動は、最近の表現で言えばコミュニティビジネスの最先端。地域資源を持続可能な方法で活用し経済活動とする手腕はさすがです。
「論」と「実践」が一体となっていて、かつ常に自ら「汗をかき身体を動かす」その姿から、僕はいつも多くのことを教わっています。
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新田さんが帰路につかれた後も、温泉、夕食、食後の歓談…と楽しい時が過ぎていきます。
今年の体験塾も全10回の9回目を迎え、5回あった宿泊も今回が最後。すっかり準・家族のように馴染んだメンバーとの名残惜しい時間を過ごします・・・が、実はただのんびりしていたわけではなく、定期的に麹や納豆のメンテナンスはしていました。今回のプログラムは(僕にとっては、ですけど)片時も気を抜けない2日間だったのでありました。
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飲むモノは飲みますけどね。

そして、朝から酵母を起こしていたパン焼きが、20時頃からスタート。マサミさんお得意のカンパーニュです。
こちらも、僕らはチビチビやりつつ、小屋に籠って発酵させたり捏ねたりしている作業を時折覗きに行く感じで参加していただきました。
まずは「へえ、こんなふうにして作るんだなー」で十分なのだと思います。

24時をまわる直前、カンパーニュが焼け、起きていた方たちで焼き立てを味わいました。
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翌日の朝食はもちろん昨夜のカンパーニュがメイン。焼きたてを食べ逃した人たちにもちゃんと味わっていただいてます。



2日目は塾生さん持ち回りのミニ講座から。

3年間タンザニアで暮らしたSさんの『ダルエスサラームどうでしょう』。実際に長期間生活していた人ならではのアフリカネタ満載の楽しい講座でした。
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僕にとっても懐かしい雰囲気がたくさん。

Oさんの講座『10歳から学ぶ〇〇〇』は、アイヌ文化について。
かつて関西で教員をされていたOさんが、子ども達相手に10数時間かけて行っていた単元の一部を再現していただいたものでした。
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アイヌの輪唱ウポポを実際にやってみると、場がとても不思議な空間に…。


本当は、ミニ講座の後は最後の畑仕事と味噌用青ダイズの脱穀の予定だったのですが、かなりの荒天だったためビニルハウスの中で説明しながら少しやって終了。
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じっくり腰据えて皆でやるとダイズの脱穀作業も楽しいのですけど、とても寒かったので…(残りの大量のダイズは僕のがんばり次第です!)



今回のフィナーレは、もちろん麹と納豆の観察と味見です。
まだ60%ほどの段階の麹ですが、表面にはしっかり麹菌が繁殖し、かじると優しい甘みが口に広がります。
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保温容器から納豆の包みを取り出し、一人ずつ手渡し。なんだか卒業証書みたいでしたね。
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この後、麹は翌日の夕方まで管理を続け、納豆はお持ち帰りいただいて夕方まで各自できるだけ40℃で維持。持ち帰ったものを味見するまでが体験塾です(笑)。



さて・・・。

「屠畜」は、体験塾の通年プログラムの中で大きな比重を占めています。「これを体験したくて入った」という方もいます。ただ、僕には実は、「屠畜をあまり際立たせたくない」という思いもあります。
前項でも述べたように屠畜実習にはいろいろな要素がつまっていて多くの学びがあるのは間違いないのですが、暮らしのつながりの「一コマ」に過ぎないという点が重要ではないかと思うのです。春から共に(生きた鶏のいる環境で)いろいろな経験をしてきた方が、信頼関係の中で行うからこそ、成立する実習だと考えています。

鶏の首を撥ね血が滴る光景は確かに刺激の強いものではあります。けれど、魚は誰でも同じように頸に刃物を入れるし内臓を取り出したりもします(自分ではやらない人もいますが、まあ、代わりに誰かはそれをやっているわけです)。肉や魚介類だけでなく、野菜だってその命を奪うことに変わりはありません。今回行なった「発酵」も、無数の微生物の死によって成り立っている行為です(だから今回の2つのメイン実習を一緒に行なえたことはとても良かったと思っています…大変だったけど…)。
そういうこと(つまり他の生命活動の利用や死)の積み重ねで僕らの食が成立していること(すべての動物は同じですよね)、いや食以外だって「暮らし」は他の生命を蹂躙することなしには成立し得ません。

本当は現実で、当たり前なこと、だけれど隠されてしまって見えなくなって、感じられなくなってしまっていること。
それらを一つひとつ直視して、体験して、罪の意識を持つのじゃなく「当たり前」として受け入れること。
・・・そうすることで、「では何が当たり前でなく、生き物としてズレているのか」「やってはいけない境界線がどこにあるのか」も少しずつ見えてくるのではないかと思います。

そしてそういう感覚も、やっぱり言葉ではないのだろうな、と思うのです。
言葉が不要なんてはもちろん言えないけれど、「体験」「五感」を伴わない言葉ばかりが飛び交う世の中(ネット中心で増々ね)において、五十嵐大介さんの漫画『魔女』の一つのセリフを思い起こさずにはいられません。
「あなた自身の体で…」
「世界を確かめて生きなさい」

そのことについて書いた項

体験塾を続ける理由は、きっと「その共有をしたい」ということなのですね。
posted by 野良人イトウ at 08:47| Comment(0) | 体験塾2013 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月14日

僕らの暮らしと「生命」。(前篇)


11月9〜10日は体験塾2013第9回目のプログラムでした。
今期最後の宿泊プログラムだったため、「これは是非体験していただきたい!」と感じていることをみっちり詰め込んだ内容となりました。

今回の大きなテーマは「暮らしと生命」です。僕たちの暮らし、というか僕たちが「生きている」ということは「他の生き物を殺したり利用したりする」ことと同義だ、と僕は思っています。なので、体験塾のプログラムの根底にはいつもその大テーマが流れている(つもりな)のですが、今回は特にそれを明確に感じていただきたいと思って活動を設定しました。

行ったことは、具体的には「発酵」と「屠畜」です。
「発酵」は、次回最終回の味噌づくりにつながる「麹」、そして今年採れたて?のイナワラを使った「納豆」の仕込み(見学のみですが、天然酵母を起こしてカンパーニュを焼く過程も見ていただきました)。
「屠畜」は、東川で自然養鶏のファームレラを営む新田由憲さんを講師にお招きし、鶏さんの命をいただいてお肉にして食べるまでの実習を行います。

宿泊プログラムの際の開始時間は通常、土曜日の13時なのですが、今回は10時に来ていただきました。「麹と納豆の仕込み」をやりたかったからです。完成までに麹は50時間ほど、納豆も30時間はかかるため、出来上がるところまではさすがに無理なのですが、それでもある程度は体感していただけるスケジュールに設定したのでした。



さあ、いよいよプログラム開始。
挨拶もそこそこに、まずは麹の仕込みです。

前夜浸水し、1時間かけて丁度蒸しあがったお米に、麹菌を「種付け」していきます。
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米袋に入れて「堆積」したものを32℃に設定したホイロで保管。カンパーニュ用のポーリッシュ種と仲良く培養(発酵の作業も、この電気ホイロが来てからずいぶん楽になりました。・・・が、実は今回入れてしばらくしてなんと家が停電し、その後数時間後に気づくまで20℃程度の状態にしてしまったのです。何とか大丈夫でしたが、電気に任せちゃうのは怖いなーとあらためて思いました)。

麹の収めたら、すぐに納豆の仕込みにうつります。

まずはイナワラをキレイに整え藁苞(わらづと)づくりです。
この作業に20〜30分かかるので、ここでようやく皆さんとちゃんとご挨拶。しばらくぶりの方々と、近況報告を行いました。
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3cmくらいの太さに出来たら、雑菌を殺すために藁苞を煮ます。このあたりは、「納豆菌の生命力」に十二分に驚嘆し、彼らに敬意を持ちながら行いたい作業です。
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アツアツの煮大豆を藁苞に入れて・・・
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新聞紙でくるんで保温容器へ。納豆の温度確保(40℃)は、湯たんぽで行います。



午前中の作業はここまで。
この後、数時間ごとにどちらもメンテナンスしながら、翌日のお昼(プログラム終了時)まで管理していくのですが、それは、彼ら菌類の生命を感じる作業でもあり、生態系に思いを馳せる時間でもあります。
発酵における「管理」とは、「生き物の環境を調整すること」と言えるでしょう。



昼食の後は、鶏の屠畜実習です。
今年の参加者の方々にとっても、この実習は大きな意味を持っていたようです。
「数日前から緊張していた」という方や「ギリギリまでやるかどうか迷ってしまった」という方、「貴重な機会だから是非やってみたい」という方、思いはそれぞれですが、皆さんの真剣に「生命と向き合おう」とする気持ちが伝わってきました。

僕がこの実習を行うにあたりいつも気をつけていることは、過剰に「殺す」ことを意識しないということです。
「食べる」ことを目的とした「生き物として当たり前の行為」をできるだけ自然に行うのだ、という雰囲気をつくりたいと考えています(もちろんなかなかそうはなりませんけど…)。
何を感じるか、は参加された方次第。僕たちはまずは「安全への配慮」それに「技術」を伝えれば十分なのではないかと思うのです。



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緊張が高まる中、講師の新田さんより「作業」の工程と注意点をお話しいただきました。
まず、自分で鶏を捕まえ、羽と足を片手で押さえて鶏の体をしっかり固定します。そうしなければその先の作業ができませんし、なにより安定して固定されることで鶏も観念することができます。不安や迷いがあるとしっかり固定できず、鶏が暴れて手元が狂うこともあります。
屠畜は食べるために生き物を殺す行為ですが、「どう殺すか」というのもとても重要なのではないでしょうか。
新田さんからも、「何より安全に」「気持ちが揺れているならやらない方がいい」との言葉がありました。

作業は、「鶏を片手で固定し、もう片方の手でナタによって首を落とす」→「血抜きする」→「熱湯につける」→「羽をむしる」という工程で行います。
お手本として新田さんが上記の作業を行うと、場の緊張感もグッと増したように感じられました。

いよいよ作業を始めます。昨年の経験者から順に、1羽ずつ、心を込めて屠っていきます。
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首を落とすことはできなかった方にも、生きた鶏を抱えてもらったり、血抜き中の鶏の足を持ってもらったり、毛をむしってもらったり、できることをできるだけやっていただきました。この実習の目的は「鶏を殺す」ことではなく「食べる前段の作業を体験する」ことにありますから、自分のできる部分に参加することで十分だとも言えるのです。
ただ、「食べる」ことはすべからく「相手の命を奪う」ことですから、そこから目を背けることはせずにいたいものです。
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参加した2歳のお子さんが首を落とされる鶏を見て、「(私が)ニワトリさんじゃなくてよかった…」とつぶやいていました。そのくらいの子どもはむしろ過剰に自分の中で残酷性をクローズアップしないもので、その子も静かに見入っていたのですが、そっとつぶやいたその言葉が実に素直な感想だなーと思いました。
「殺されたくない」「食べられたくない」・・・そう思っているたくさんの生命を僕たちは毎食毎食奪いながら生きています。



「解体」「精肉」の実習は、室内で行いました。
モモ、手羽、ムネ、ササミ・・・と、肉を切り分け、最後に内臓を取り除く「つぼぬき」を行います。
この段階に来ると「鶏の死体」は「鶏肉」になり、先ほどまでの緊張感とは違う「技術に対する真剣さ」に場が包まれました。
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精肉作業が終わりそれぞれお持ち帰りする肉(鶏ガラ含む)を仕舞った後は、手羽先スープをいただきながらの感想シェアリングです。
「食べるための作業」を行っているのですから、精肉して終わり、ではなくその場で全員で味わうことが重要だと僕は思っています。みんなで心から「いただきます」をして、一緒に味わうところまでがこの実習。さっきまで生きていた鶏さんの、塩だけで味付た「チキンスープ」をいただくことができました。
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皆さんからの感想では、「屠った時の気持ちや感覚」「屠畜や精肉の技術のすごさ」から、「社会構造の問題」まで様々なことが語られました。関西出身の方は特に、屠畜と部落差別は切り離せない問題です(新田さんも大阪の出身。ご自分で屠って食べることにこだわる理由の一つに「幼少から触れてきた差別構造への反感」があるともおっしゃっていました)。
部落に限らず、「自分がやりたくないことを(お金で)人にさせる構造」はいたるところにあります。
そういった「生きる」「暮らす」にかかわる多くのテーマを内在させているのがこの「屠畜実習」なのだと、僕自身もあらためて感じました。

(つづく)
posted by 野良人イトウ at 08:25| Comment(0) | 体験塾2013 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月07日

タネ採って、明日を想う秋の夕暮れ。

ギックリ腰からちょうど1週間後の先週土曜日は、体験塾第8回目のプログラムでした。
数日前まで立つこともできずに寝たきりだったので、「はたして開催できるのだろうか!?」と憂慮していましたが、参加者のみなさんのご協力もあって何とか行うことができました(良かった…)。

今回は宿泊のない1DAYプログラム。テーマを「秋の農」に絞って行いました。
「秋の収穫と食いつなぐための知恵・技術、そして来年へ…」ということで、メインの講座は『自家採種の意義と実際』、講師は北海道の自家採種の第一人者・坂本一雄さんです。

午前中はまず久しぶりの畑の様子を観察しながら、この後の秋の農作業をイメージしたり実際に収穫したりしました。午後のタネ採り実習で使う実なども採りました。DSCN5826.JPG
まずはいろいろ観察。

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ズッキーニ。これは保存しといて冬食べます。タネも採ります。

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ピーマンなどの収穫。まだしばらくは採れそうです。10月末までいけるかなー?

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ダイズの刈り取り。うちのダイズは晩生ばっかりなのでほとんどのものはまだ青いのですが、少し枯れてきた早生種のものを刈って島立てしました。

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ゴボウ堀り。重労働です・・・。
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でも、キレイに掘れたときはほんとに嬉しいのでした。
腰がよくなったら30本くらい掘らなきゃ(…と思うとオソロシイですけど)。

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トマトの瓶詰め保存。
「腐敗」が微生物の作用であることを知れば、自ずと保存に必要な条件が見えてきます。
どうすればその空間の腐敗菌を減らせるか。そして増殖できなくさせられるか・・・。生物学・生態学的に暮らしを考えることはとても重要だと僕は思っています。
食品保存は「科学」です。


お腹をすかせて、ようやくお昼ご飯!
もちろんお昼は持ち寄り「らんらんランチ」です。
今回は関西出身Sさんの、本場のお好み焼きも提供していただきました。DSCN5855.JPG
自分で作るのと全然違う!これはレシピを教わらねば、と思いましたね。

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今回も持ち寄りは豪華であります。


そして、午後はいよいよ「タネ採り講座&実習」。

最初に1時間ほど坂本さんからお話を聞きます。
何故今、自家採種が必要なのか。
今の社会でタネはどう扱われているのか。
タネ採りとはどんな技術なのか。
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実習では、まずは豆類・・・DSCN5864.JPG

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それからキュウリやナス、トマト、ピーマン・・・DSCN5872.JPG
ニンジンやゴボウなども採ってみました。
この畑でキュウリのタネが昨年からあまり採れなくなっている理由を考えたりもしながら(タネ、少ないんですよね…)。

「自家採種」というとちょっと大変なイメージ、難しそうなイメージがあるかもしれませんが、食べるために採ることとそう変わらなかったり、ちょっと長く置いておいたりするだけのものがほとんどです。
決して難しい技術ではないし(2年草の菜類などはやや大変ですけど)、家庭菜園、自給菜園にこそ必要なことだろうと思います。
なにより、タネを採ることで間違いなく作物への愛着が増しますし、彼らを生命として尊重する素地となるはずです。タネ採り自体が「遊び」としてもオモシロいですしね。


実は今回、坂本さんをお招きする畑講座は今年の最終回でした。
参加者で記念写真です(今回お休みが多かったのが残念!)。DSCN5880.JPG

コモンハウスでのシェアリングなどを少し早めに終え、最後は田んぼへ向かいました。
1週間前に刈って干してある稲の状態をみんなでチェック。DSCN5884.JPG
まずまずの状態でしたね。
皆さん今回もお疲れ様でした!

17時過ぎに解散したころには、もう日が落ちかけていました。
夕暮れがどんどん早くなるこの季節。
気は焦りますが、秋の作業、楽しんでやっていきたいものです。
(腰も不安だしね・・・)
posted by 野良人イトウ at 07:39| Comment(0) | 体験塾2013 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月11日

羊を活かす暮らし方。

先週末の体験塾、メインのプログラムは『羊を活かす暮らし方』。講師にハイジ牧場の場長、金澤さんをお招きしておこないました。

天候は残念ながら今一つで、しとしと雨が降ったりやんだり。そんな中、少し早く集まった方で小麦の脱穀などをしてから昼食。もちろん持ち寄りの「らんらんランチ」です。

ランチ後、軽く近況報告など済ませてから、いよいよ講座が始まります。
まずは金澤さんより「羊という動物の生態」「家畜として共に暮らすあり方」などをお話していただきました。なかなか聞くことのできない「生産業としての畜産の難しさ」「消費者に伝わりづらい現状」など社会的な面からのお話もあり、参加者一同聴き入りました。
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その後は、急きょ行うことになった「毛刈り」です。
羊さんを連れてきていただきじっくり観察させていただく予定はあったのですが、本来毛を刈るのは春。今から冬に向かっていく時期に行なうことはありません。
それがこの子の毛を刈ることになった理由は・・・?
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羊・・・出荷する前には毛を刈らなくてはならないのですね。
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とっても愛らしい表情の羊さんを前に、ちょっとシリアスなムードが流れました。



屋内に戻り、「羊毛加工実習」です。
刈ったばかりの毛はまだまだすぐには使えないので(その作業についても少し話していただいて)、準備して下さったキレイな羊毛でフェルト細工を行いました。
初めての方もいたのでもう少し簡単なものをつくれば良かったのかもしれませんが、「せっかくだから使えるものをつくりましょう」という金澤さんの心意気を頂戴して、ちょっと贅沢にたくさんの羊毛を使ってスリッパや帽子、ポットカバーなどに挑戦(最初はフェルト玉くらいで・・・と考えていました)。
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ムズカシイのは確かですが、この手のことはつくりながら体がわかってくるものでもあります。何度かやってみると羊毛がフェルト化する感覚もつかめるので少し大きなものでもつくれるようになりそうです。
後からいくらでも修正が利くのも羊毛の素晴らしさ。夕飯後も、談笑しながらニードルでチクチク夜なべの作業。手を動かしながらの雑談が、またいいものなんですよね。
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ちなみに、この日の夕飯は、「羊肉の薬膳カレー」と「モモ(チベット風肉まん)」。とっても貴重なハイジ牧場の羊肉を美味しくいただきました。



翌日はミニ講座からスタート。ミニ講座は、参加者の方に輪番で講師を務めていただく時間です。
今回の講師は、『リンパの流れとはたらき』をテーマにリンパマッサージのやり方などをお話しして下さったTさんと・・・
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『魔法の質問』というミニワークショップを行って下さったKさん。
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リンパマッサージをしながら体を整え、その人らしさを認め合う「質問」を投げかけ合いながら心をほぐしました。「魔法の質問」はキッズインストラクター用のもので、子どもを対象としているようなのですが、大人にとっても十分価値のあるものですね。
どちらもとっても貴重なお話で、「やっぱりミニ講座は面白い!」とあらためて思いました。ミニ講座を行うこと自体が、参加者同士を認め合う時間にもなっているはずです。

ミニ講座の後は、『持続可能な社会・暮らしのあり方』についてのショートディスカッション。
「リサイクル」や「植林活動」「エコカー」など「エコロジカル」「持続可能(っぽい)」イメージで推進されているコトモノは、実際はどうなのでしょう?また、「割りばし」や「ダム」「化学肥料」など「あまりエコっぽくない」イメージのコトモノには利点や価値はないのでしょうか?はたしてそんなに「悪いもの」なのでしょうか?・・・ということを意見を出し合いながら考えてみたのです。
様々な角度からの情報を得てみると、すべてのことが一概に「これは善い」「これは悪い」とは決められないことがわかってきます。「都合の悪い何か」を隠すために特定のものを悪玉として強調するなども、いつの時代も使われてきた手口(例えば数年前までのCO2と原発の関係のように…)。
本質を見極めるには、客観的で冷静な情報判断力がとても重要であることを感じてほしいという思いで、ディスカッションの後は『こんにちは農薬』という講座も行いました。
「化学合成農薬」もイメージ先行で嫌われているものの代表です。こんな講座を行うと、一部の方から「お前は農薬の販売員か?!」と言われてしまうこともあるのですが、僕は単純に見えにくい情報を感情を交えずに浮かび上がらせているだけ。僕自身は、農薬を買って使うことはありません。そこにはちゃんと「理由」があります。「危険だから」「毒だから」なんて漠然とした理由ではありません。
だけど一方、この社会において適切に使用して生産されている農家さんを非難することはできないとも思っています。社会経済の面からも生態系の面からもない方がいいけれど、なくすことはできないし、「使い方次第」だとも思っています。

短時間でいろいろ話してしまったため、「モヤッと感」が残った方もいたはずです。
でも、その「モヤモヤした感じ」がとても重要じゃないかと僕は思うのです。
「わかりやすい情報」「あらかじめ答えも感想も用意されている報道」ばかりのこの(表面ばかりスッキリした)社会に必要なのは、メリットデメリットを踏まえた上で、モヤモヤを抱えながら判断していく力だと考えるからです。
なので、「モヤッと感」を持ち帰っていただくのは本意なのですが・・・

やっぱり外で体を動かしてスッキリしちゃいましょう!
雨が上がりの小気味良い小春日和の下で、みんなでイモ掘り
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1時間弱の作業の後は、こぐま座さんでお昼をいただき、恵庭の自然農園「恵子ガーデン」へ。
6月以来の、坂本一雄さんの圃場見学です。
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相変わらず美しい「共生空間」でした。



今回は恵庭にて現地解散です。
2日間の長―いプログラムに参加していただいたみなさん、お疲れ様でした(もちろん1日しか来られなかった方も!)。
ついついいろんなことやりすぎて長くなっちゃうのが悪い癖です・・・。

御もてなしに徹したコーちゃんはすぐにグッスリ…。
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(家出に徹したトッチは元気ハツラツです…)

posted by 野良人イトウ at 08:06| Comment(0) | 体験塾2013 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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