今年採れた醤油は、自重で落とした<一番搾り>が7.5ℓほど、重石で圧をかけて搾った<二番>が1.5ℓほど。
これくらいあれば、もちろん来年までの1年間、買わずに安心して<自醤油>だけで調理ができます。
そして、搾った後の<諸味粕>が6.1kgほど・・・。
例えば味噌なら、この6kgも普通に消費するわけですから、搾って使う液体調味料の贅沢さを実感させられますね。
この時期は、「冬がやって来るのだなあ…」という気分になり、「雪の前に片付けなど出来るかなあ…」と若干不安になってきます。
「醤油搾り」って、僕にとってはそんな季節です。
さて、例年記していますが、今回も<醤油2019>の製造過程を振り返ってみましょう。
題して、「大地からの一滴ができるまで」。
始まりは、2016年の9月です。
小麦を播くところから、僕の<醤油造り>は始まるのです。
この時はまだ、うちの小さいヒトもこの世にまだ出てきてませんでしたねー。
(でも、厳密に言えば、このタネを採ったのが7月だし、それを播いたのが前年だし・・・と、いくらでも遡ってしまうのが「自給的な農」。途切れることなく<始まり>と<終わり>を繰り返しながら、ニンゲンは生きているのですね・・・)
翌2017年の5月末からは、大豆の栽培が始まりました。
大豆は味噌用、醤油用、そして豆腐に納豆に…といくらでも可能性の拡がる、ウチでは最も重要な作物です。
2017年8月前半、小麦の収穫。
思い出しましたが、この年の小麦は播いた直後にCoccoさんに食べられて!、かなり収量が少なかったのでした。
小麦は収穫後、脱穀選別などして、醤油用、パン用、うどん用などに振り分け。
もちろん一番大事なのはタネ用ですね。
このタネを翌9月にはまた、播種しました(2020年に搾る醤油諸味となってます)。
2017年10月半ば、大豆の収穫。
これは豆部2017の人たちとの収穫の様子です。
小さいヒトも畑を這いつつ応援。
ちょうどその頃、2016年に仕込んだ醤油を搾ったりもし・・・
2018年3月後半、いよいよ<醤油プロジェクト2018>の準備が整いました。
小麦を炒って挽き、大豆は吸水させて蒸して・・・
醤油麹を育てます。
3日間ビッチリ集中しなければならない、醤油づくりにおいて一番難しく重要なシゴトです。
出来た麹は、すぐに塩水に入れて<諸味>に。
諸味はヘラ(櫂)で十分混ぜてあげます。
これから1年半かけて、じっくりお醤油さんを育てていくことになるのでした。
特に最初の半年間は、たくさん手入れの必要があって手間もかかります。
そして・・・
2019年10月。
今年もいよいよ<醤油を搾り>と相なったのでした。
諸味を搾り用の袋に入れて・・・
まずは吊るして、じっくり自重で搾ります。
ポタリポタリ・・・とても貴重な<大地からの滴>。
最後は重石を乗せて一晩。
計3日間かけて搾ったお醤油の、最後のシゴトは<火入れ>です。
滓をすくいながら、80℃で20分。
ビセイブツさんは死んでしまいますが、火入れをすることで香り高く安定した状態のお醤油をなるようです。
一部は火入れをせずに、生揚げ醤油としていただいたりもします。
こうして、今年も1年分のお醤油を得ることが出来たのでした。
3年以上かかる長ーい取り組みです。
手間と時間をかけて出来たお醤油は、もちろん格別。
…なのですが、毎回、極上のものが出来るわけでもありません。
今回搾ったものも、実は内心、点数をつけるなら60点かな。
若干塩味が強く、味が薄い感じがします(色も薄口しょうゆのような感じ)。
たぶん麹の出来(働き)が不十分で、小麦や大豆の甘み、旨味を出し切れなかったのかと思います(その分、諸味が美味いかも…苦笑)。
でも、いいのです。
僕にとって、<醤油づくり>は、お醤油を得るためだけの行為ではないからです。
安心安全な醤油が欲しい、という思いでやっているのでもありません。
僕が求めているのは、この醤油をつくる工程で得られる、たくさんの経験。知恵。
2000年かけて人間が行ってきた菌との関係、それを活かす技術、自分の暮らしを自分で成り立たせていく自立性・・・
醤油づくりで得られるものは、お醤油だけではないのです。
それは、こういう暮らしをしていれば、すべてについて言えることかもしれませんね。
先日、今年の大豆の収穫をしました。
8月には小麦を収穫しています。
これらを使った<醤油プロジェクト2020>は、来春3月に始まります。
同時期に、エコビレッジライフ体験塾でも『醤油講座』を行う予定です。
*『醤油講座』自体は、12月〜3月の間、各所に「出前講座」として出向いていますので、ご興味のある方はお問い合わせください。
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★暮らしを学ぶ・暮らしで遊ぶエコビレッジライフ体験塾では、各種講座・イベント行っています。
★イベント情報
『里山スプーン〜樹から生み出すスプーンづくり』
身近な森の木を「使った」ことはありますか?
日本人の暮らしは古くから森や木と共にあり、暮らしの道具やエネルギー、住環境にいたるまで木を用いてきました。
本講座では、森を歩き、木を選ぶところから始め、切ったばかりの生の枝からオリジナルのスプーンを削り出します。
〇日時 2019年10月25日(金)10:00〜16:00
〇場所 当別町金沢147-1(エコビレッジライフ体験塾)
〇参加費 3000円
〇講師 草刈万里子さん
『味わう!世界の発酵食〜臭いはホントに美味いのか』
小さなイキモノの力を借りて、食べ物をより美味しくするワザ「発酵」。
ただ、世界にはなかなか近づきがたい「奇妙な発酵食品」も数多く存在します。
「臭い!」・・・でも「美味い!?」・・・そんな不思議な発酵食品を嗅ぎ、味わってみることで、あなたの食べ物・食文化に対する視点や奥行きもきっと広がるはずです。
〇日時 11月4日(月祝)12:00〜15:00
〇場所 当別町金沢147‐1
〇参加費 2500円
『つけもの日和』
「漬物講座」、今年も開催いたします!
仕込むのは、漬物の基本「たくあん」と、北海道のソウルフード「ニシン漬け」。
たくあんは、シンプルで誰でも失敗ナシの技をお伝えします。
ニシン漬けは、50年間漬け続けてきた伊藤良子氏(母です)に教えてもらいます。
〇日時 11月日(日)12:00〜15:00
〇場所 当別町金沢147‐1
〇参加費 3500円
*すべてのお問い合わせ、お申込みは、HPのお問い合わせページ、もしくはEmail、Facebookのメッセージにて承っています。
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