今年も11月の前半に、「タクアン」と「ニシン漬け」を仕込んでいただく講座『つけもの日和。』を行いました。
僕は結構いろいろな種類の講座を行っていますが、漬物の講座はかなり大変なものの1つです。
それはまず、事前のダイコン干しなどがあるから。
60〜70本ほどの大根を農家さんの畑から抜いてきて、洗って干す作業をし、その後10日程はダイコンの管理をしなければならないのです。
天候気温に注意しながら、シートをかけたり、時には家の中に入れたり(あまりに冷える日はシバレないように…)
タクアン仕込みで一番大事なのは大根の干し具合ですから、講座の日を逆算して(その間の気温も予測して)収穫に行き、当日に備えるのは意外と大変で緊張感も多いのでした。
使う日が決まっているので失敗できないですしね。
それでも、数十本のダイコンが干されている姿は圧巻。
なかなか気持ちの良い景色です。
もう一つ、この講座の肝は、ニシン漬けの講師に僕の母を呼んでいること。
何度かこのブログでも書きましたが、僕にソウルフードと呼べるものがあるとしたら、それはこの「ニシン漬け」です。
父が子どもの頃は、貧乏で冬のオカズのメインは毎日ニシン漬けだったと言います。
(ソウルフードって、単なる郷土料理とかじゃなく、もともとは貧しさと一体の食べ物なんですよね)
母が嫁いだ1年目に祖母に仕込みを見せてもらい、翌年からずっと自分で仕込んで約50年。
(僕は貧しい食生活ではなかったけれど)やはりニシン漬けは冬の食卓に欠かせないものでした。
それはあくまで僕の思い出なのですが、北海道の代表的漬物であること、そして母自体がちょっと老いてきて仕込むことが億劫になってきていることを考え、今のうちに多くの人に自分の言葉で伝えて欲しい、と思ったのです。
(「かなりの努力家で勉強家な母に、光りを当てたかった」という息子心もありますけど・・・)
でも、母が今まで感覚的に仕込んできたものを、初めての方にもわかるように失敗なくできるように数値化・レシピ化するのはけっこう大変な作業ではありました(今でも毎年少しずつ改善しています)。
・・・と、そんな事前の準備を経て迎えた当日。
気持ちの良い、まさに『つけもの日和。』に恵まれて、たくさんの方に集まっていただきました。
(漬物仕込みとしては少し暖かすぎるくらいでしたが)

初めに、漬物の基本であるタクアンの仕込みをしました。
今回のダイコンがちょっと太すぎて水分が抜けにくかったため、持ってきていただいた容器ではいっぱいになってしまいました。
(無理に予定通りの5本にせずに4本ずつにしても良かったかな)

使っている米糠は、僕が田んぼを借りている長沼のファームキトラさんの無農薬のもの。
簡単な座学をはさんで、次はニシン漬けです。
ここからは母にバトンを渡し、心構えや材料についての説明をしてもらいました。
今回は10号樽程度の仕込みでしたが、それでもご持参いただいた野菜の量などはかなりの量。
重たい荷を抱えて来てくださった皆さんに感謝しつつ…。

母流のニシン漬けは、切り方、詰め方に少し特徴があります。
これは、祖母に教わったやり方というより、母が50年の間に少しずつ改良を加えてきたもの。
だから、今回お伝えした仕込みについても、「このニシン漬けを残して欲しい」というより、それぞれが自分好みに変えていって欲しいな、という思いを僕も母も持っています。

基本や素材の役割を理解した上で、あとは自分のつくりたい味を試していくのが漬物の醍醐味なのではないかと思います。
材料を詰め込む毎に、樽の中の<景色>が変わります。
母は、この<景色>が重要と言います。
塩加減も含めて、「感じを覚えて」と言うのです・・・が、もちろんそれは一度ではなかなか体得しにくく、繰り返し(失敗もしながら)身につけていくことなのだろうと思います。
「生産者」でも「消費者」でもなく、「生活者」であろうとすれば、この<繰り返し>こそが暮らしの軸なのかもしれません。
毎年同じことを繰り返し、でも、同じことをしているようで少しずつ変える。変化する。
けれど、軸はやっぱりぶれない用にする。
大きな螺旋を登っているような感覚があります。
(ちなみに、それが<ぐるりの暮らし>の所以の1つでもあります)
皆さんの仕込みが終わった後、簡単にお疲れ様と感想シェアリングを行いました。
お茶請けはもちろん漬物です。
母が、この日に向けて作ってきてくれた5〜6種類の漬物を食べていただきながら、しばらく歓談を楽しみました。

こうして今年も無事に『つけもの日和。』が終了しました。
漬物の仕込みや楽しみは冬中(いや、年中?)続きますが、母とともに行うこの講座、僕には結構大切な時間となっているので、無事に終わってホッとしました。
一昨年は大きなスーツケース(中身は漬物沢山)を引っ張って電車で来てくれた母も、今年は「移動がシンドイ」とのことで、旭川への送り迎え付きで来てもらいました。
「来年はもう出来ないかもしれないよ」と言っていますが、是非体の動く限り、自分の中の知を伝えて欲しいと思っています。
母だけではなく、表舞台に出るわけでもなく淡々と営みとして続けられ蓄積されてきた貴重な知恵や市井の偉人たちから学ぶような場をつくっていきたい、というのが今の僕の目標かもしれません。
母と一緒に仕込んだニシン漬け、今年も冬の食卓を飾ってくれることを嬉しく思います。
そして、そんな場に共感・同席して下さった参加者の皆様に、深く感謝いたします。
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〇定員 10名
*すべてのお問い合わせ、お申込みは、HPのお問い合わせページ、もしくはEmail、Facebookのメッセージにて承っています。