2016年08月13日

人間の土地。

恵庭で自然農法を営まれていた坂本一雄さんが亡くなって、ひと月が経ちます。
お通夜には参列させていただいたけれど、その時は農園には寄れなかったので、ずっと気になっていました。
この世界において、耕作地としては一つの「完成形」のような美しさと機能性を持った場所、恵子ガーデン。
主を失った農園がどうなっているのか・・・先日、わずかな時間でしたが、訪れることができました。
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ナスやトマトが植えられていましたから、関係者のどなたかが、おそらく時々管理にいらっしゃっているのだと思います。
が、言葉にすることがすごく難しいのですが・・・、僕たちの知っている恵子ガーデンは、もうそこにはありません。

それは、一雄さんが畑に出られなくなった昨年から感じていたことです(昨年は秋まで何度か訪問していました)。
お手伝いの方が一雄さんのご指導のもとで時々管理をされていたのですが、その時点で大きく農園の雰囲気は違っていました(それは仕方のないことだと思います。かけられる時間も限られますし、一雄さん以外の誰がやってもそうであったでしょう)。

「私は大したことはやっていない」
「楽をしながらほんのちょっと作業してるだけ」
「あとは作物や自然が勝手にやってくれる」
・・・と涼しげにお話されるその言葉を、僕は決して間に受けてはいませんでしたが、やはりそんな簡単、安易なものではなかったのです。
(・・・そこが「自然農法」という言葉の恐ろしいところです)

一雄さんがされていたこと。
それはきっと、経験に培われた的確な観察眼によって、適期を逃すことなく、絶妙な「量」と「技」で最小限の手を加えること、だったのだと思います(と、言うは易し。なかなか真似の出来ないことです)。


先日行った時には取り外されていましたが、かつて恵子ガーデンには吉田十四雄さんの『人間の土地』の一節が掲げられていました。
ちょっと長いけど、載せておきます。

「はいの。まだ人間のものではございませぬ。神様の土地や思えば神様の土地。如来様のものと思えば如来様、獣のものと思えば獣のものでございまする」
「はあてね?」
「木や草のものと思えば木や草のものでございまする」
「なるほど…」
「人間が涙を流し、汗を流し、苦労に苦労を重ねて拓きまする。拓き上がって初めて人間の食うものがとれまする。そこで初めて人間の土地になるがでございまする」

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一雄さんの「本音」は、実はこの一節にあったように思います。
「人間の土地」であった農園が、主をなくした今、神様や獣、木や草のものへと還っていっているのを僕は感じました。
それは当たり前のことだし、悪いことではないけれど、一雄さんと奥様がつくり上げた「作物と野に生きる生命が奇跡のようなバランスで調和した生態系」もまた、手が加えられなければ瞬く間に失われていくのです。
そのことには、やはり寂しさも覚えてしまいます。



思い起こせば、僕がはじめて一雄さんにお会いしたのは7,8年前。
当時札幌の円山にあった「タネポタアニ」というお店のイベントでのことでした。
社会人学生として農業を学んでいた僕は、以前から気になっていた自然農法の講演があると耳にして、参加していました(もともと福岡さんや川口さんの考え方に惹かれていたけれど、道内の「農業者」で実践されている方にはお会いしたことがなかったので…)。
(余談ですが、その講演会を企画していたのは、現在も何かとお付き合いのある「こぐま座」のバレンタインさん。・・・不思議な縁を感じます)

その時の話の内容は実はあまり記憶にないのですが、一雄さんの柔らかい口調と穏やかながらも核心を目にしてきた方ならではの芯の通った雰囲気が印象的でした。
その後1年ほどして、深いお付き合いをさせていただくことになったのですが、最初に会った時の印象のまま、闘病に入られた昨年までにたくさんのお話を聞かせていただき、様々な企画にもお付き合いいただきました。
とても幸福であり、幸運なことであったと感じます。

たくさんの時間を共にさせていただきましたが、僕は一雄さんと「師弟」の関係ではありませんでした。
「先生」と呼んでいたけれど、それは周りの方々が「サカモトセンセイ」と呼んでいたことに習っただけで、ニックネームのようなものだと考えていました。
ご本人も「私は先生じゃない。本当は坂本さんでいいんだよ」と度々口にされていましたし、「教わる」というのは違うような気がしたのです。
「師」というよりは「同志」、敢えて言うなら、「すごい先輩」というのが相応しいかもしれません。
ヒントをいただくことはあっても、本当の師は作物自体であり、草であり、虫、微生物たち。
そして、思考し、やり方を決めていくのはあくまで自分自身・・・というのが、僕と一雄さんの共通の認識だったと思っています。



思い出の尽きない恵子ガーデン。
誰かが今後管理することになったとしても、あの農園が再び絶妙なバランス、美しさを取り戻すことはないように思います。
一雄さんと同じ様にあの場所に「最適かつ最小限の手」を加えることの出来る人は、おそらくもういないであろうからです。

ただ、一雄さんは大勢の方の心に「タネ」を遺していかれました。
今回訪問できたのも、「近所の人の目に触れるところだけでもキレイにしておきたい」という配慮で足を運び手入れを続けている長沼町のHさんが除草に誘ってくださったからです。
そんな想いもまた、一雄さんの功績なのだと思います(行動を続けているHさんたちも素敵な方々です)。

実際の「タネ」も遺していただきました。
青大豆やキタノシズク等々、僕の畑でも毎年育てさせていただいています。
どこかでニコニコと微笑みながら見ていて下さると思いながら、これからもタネを播き、育て、タネ採りも体の動く限り続けていきたいと思います。

一雄さん、見ていてくださいね。


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〇場所  エコビレッジライフ体験塾(当別町金沢147−1)
〇参加費 2000円

★お問い合わせ・お申し込み
       エコビレッジライフ体験塾 伊藤伸二まで
       itogakiretatakoAyahoo.co.jp
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posted by 野良人イトウ at 10:58| Comment(0) | 思想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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